DIATONEの新フラッグシップスピーカー、DS-SA1000がマジでスゴイ!

今でこそ、音が良いナビの代名詞になった感のあるDIATONEだが、2016年にブランドが誕生して70年となる、日本の代表的スピーカー・ブランドである。そのDIATONE、2000年前後に一旦、商品が消えたこともあるが、車載用では2006年に高級スピーカーのDS-SA3でDIATONEブランドが復活。その翌年にはトゥイーターの振動板にボロンを採用したフラッグシップ・スピーカー、DS-SA1を発売し、ハイエンド・カーオーディオ界になくてはならない存在となった。



そのDS-SA1も2年ほど前に生産が終了し、新たなDIATONEフラッグシップ・スピーカーの登場が待たれていたのだが、車載用DIATONE復活10年目の節目となる2016年、満を持して登場したのが新たなDIATONEの車載フラッグシップ・スピーカー、DS-SA1000だ。

DS-SA1000はネットワーク付属で67万円、ネットワークレスが60万円(ともに税別)
その価格は17cmセパレート2ウェイ・システム(パッシブ・クロスオーバーネットワーク付き)で67万円(税別)!。マルチアンプ・システム用のネットワークレスモデルでも60万円(税別)と、国産の車載スピーカーではダントツの高価格。海外ブランドのスピーカーには、それ以上の価格のものも存在するが、もっとも高額な部類の車載スピーカーであることは間違いなく、期待せずにいられない。

DS-SA1000だが、トゥイーターの振動板素材は、DS-SA1同様のB4Cボロン。しかし形状はDS-SA1のドーム型から、DS-G500などと同様のドーム&コーン形状に代わり、振動板の口径を36mmへと大きく拡大している。ちなみにDS-SA1の振動板は30mmだ。

トゥイーターの振動板はB4Cプレミアムボロンのドームコーン型
この形とサイズを実現し、さらなる性能向上を図るために新たな製法を開発した。これまではプラズマ溶射法という製法だったが、DS-SA1000のトゥイーターは真常圧焼結セラミックス製法。この製法によって振動板の伝搬速度は実測で毎秒12700m。マッハにすると36〜37。音速の36〜37倍の速さだ。従来の製法では毎秒12000m以下だったから、大幅な性能アップである。

ちなみに物理的に秒速10000mを超える素材はボロンのほかにダイヤモンド、ベリリウムの3つしかないこと。そのうち、理論値でもっとも速いのはダイヤモンドで次にボロン、その次がベリリウムという順だそうだが、振動板の状態での実測値はDS-SA1000のB4Cプレミアムボロンが世界最速とのことだ。またボロンは内部損失が高いのも特徴の一つ。ダイヤモンドやベリリウムは、叩いてみると素材固有の音を少なからず発するのに対して、ボロンの内部損失は紙に近く、素材固有の音を発しない。そのため、超高域再生が可能な上に、原音に近い音を再生できるのだ。

ウーファーはNCVより進化したNCV-R振動板を採用
ウーファーの振動板は、基本的にはDS-G500などと同様のカーボンナノチューブを使用したNCVだが、より高性能化を図ってNCV-Rに進化している。そもそもカーボンナノチューブ自体がカップ積層型に変わっていて、振動板に混ぜ合わせる樹脂とがっちり結合するようになった。そうして最適合条件を見直すことで、実測値で毎秒6300mというウーファーの振動板素材としては世界最速の伝搬速度を達成している。
ダブルネオジウムの磁気回路。フレームの構造も凝っている
磁気回路はダブルネオジウム。交流磁気歪みをキャンセリングするMLCTという方法で、高い磁束密度を維持しながら低音域の歪みのエネルギー成分を約10分の1に低減することに成功。プレートはトゥイーターにも採用しているECCTというスリット入りの構造で、プレート内を流れる右回りと左回りの渦電流を同一化。渦電流が交流歪みに与える影響をキャンセリングして、大幅な音質改善を実現している。
パッシブクロスオーバーネットワークはバイアンプ接続が可能に
そのおかげで、2ウェイでありながら20Hzから20kHzまでの可聴帯域をフルにピストンモーションで再生できる。つまり2ウェイで分割共振のない音作りが可能なのだ。一般的な2ウェイでは、可聴帯域をピストンモーション領域ではカバーできず、分割共振が発生してしまう。それば音の濁りやふくらみなどの原因になってしまう。それを嫌うとスピーカーを増やして3ウェイ化して、それぞれのスピーカーがピストンモーション領域で動くようにするわけだが、DS-SA1000ならこれまで3ウェイでなければ得られなかった、濁りがなく高密度で厚みのある音が得られるというわけ。2ウェイスピーカーとしては高いが、それで3ウェイと同等、もしくはそれ以上の音が得られるとしたら、インストール費用等も含めるとむしろ安い買い物になるのかもしれない。
試聴車はメルセデスベンツA180
その音をメルセデスベンツA180のデモカーで聴いた。スピーカーはDS-SA1000にサブウーファーのSW-G50をプラスした構成。ソースユニットには新しくなったDIATONE SOUND.NAVI、NR-MZ200PREMIを使い、スピーカーを駆動するアンプには2台のブラックスMX-4を奢っている。しかも、1台のアンプでウーファーとサブウーファーを鳴らし、もう1台ではトゥイーターだけ鳴らすという贅沢なマルチアンプ構成だ。

サブウーファーのSW-G50と2台のブラックスアンプを使用
音が出た瞬間驚いたのは、音場の広さ。左右の音場はAピラーを超えて広がるとともに、奥行きもフロントウィンドウの向こうまで広がる。これまでクルマの中では感じたことがなかったような音場感だ。

もっとも、この音場再生力はDIATONE SOUND.NAVIの最新機、MZ200シリーズによるところも大きい。詳しいインプレッションは近いうちに別に紹介しようと思うが、このMZ200シリーズ、昨年フルモデルチェンジしたMZ100がベースのマイナーチェンジだから、進化もたいしたことないだろうとタカをくくっていた。
DIATONE SOUND.NAVI2016-2017モデルも大きく進化している
ところが、スピーカーは純正のままで、ナビをDIATONE SOUND.NAVIに替えただけのインプレッサの音を聴いて驚いた。思わず「あれっ、スピーカーも替えた?」と三菱の担当者に聞いてしまったほど。音場の広がりも、解像度も、MZ100の時の音とはまるで違う。もしかしたらMZ90からMZ100へと進化した時よりも、進化が大きいかもしれない。そう感じるほどの、音の変わりようだ。

話をDS-SA1000に戻す。よく、音が消える間際まで音が聞こえるほど解像度が高いというような表現をする時がある。それは形容句で実は多少、誇張していることもあるが、DS-SA1000はまったく誇張はいらない。掛け値無しに、音が消える間際の余韻までしっかりと耳に入るのだ。このような経験もカーオーディオでは初めてである。

A180のトゥイーターはドアミラー裏のパネルにインストール
前フラッグシップスピーカーのDS-SA1の場合、ウーファーにアラミドのハニカムコーンを使っていたこともあって、高域と低域の音色差が気になることもあったが、DS-SA1000は、ウーファーとトゥイーターに同一素材を使ったDS-G500同様の、高域から低域まで一体感のある音色。しかも、全帯域にエネルギーがありムラがない。だから2ウェイだからといって「ちょっと中域が薄いからスコーカーを足したいよね」と感じるようなことは、まったくないのだ。全可聴帯域をピストンモーション領域でカバーした効果が、ここに出ている。

音の立ち上がりのレスポンスは、ブラックスのアンプのおかげもあって、DS-G500以上の感じ。スネアやシンバルのアタック音が気持ちいいくらいに切れる。音の飛びもいい。デモカーの視聴前に、ジャズクラブのコットンクラブで新製品発表会を行い、そこでデモンストレーションしたのだが、広い会場をものともせず、後方までしっかりと音が飛んでくる音には正直、びっくりした。実際の生演奏並みとは言いすぎだが、ただ大きな音でなっているだけではなく、エネルギーを伴って音楽が伝わってくるのだ。
ドアのウーファーはアウター取り付け

もちろん、DS-SA1000はホーム用の高級パワーアンプを使って鳴らしていたようだし、業務用パワーアンプで鳴らしたSW-G500も加わっていたのだが、あれだけ音の飛びがよく超高域からローエンドまで音階がはっきりしたキレの良い音を聞かされたら、欲しくなる。音楽好きには、リズム重視とメロディ重視の2タイプいると思うが、僕のようなリズム重視の音楽好きには、間違いなくハマる音。まだ新しいため、高域に多少の硬さはあったものの、エージングが進んでどう変化していくのかも楽しみだ。

試聴時は、すべてサブウーファーを加えた状態だったため、DS-SA1000単独での低域再生能力に関しては未確認だが、おそらくサブウーファーを加える人がほとんどだろうから、気にしなくてもいいのかもしれない。いずれにせよ、サブウーファーが無しの状態のDS-SA1000単独での試聴インプレッションも、いずれ近いうちに報告しようと思っている。

いろんなカーオーディオ機器を試聴していても、心の底から「欲しい!」と思えるものにはなかなか出会えないが、久々に心底「欲しい!」と感じたスピーカーだ。

DS-SA1000